先日、“聖路加市民アカデミー”が聖路加看護大学で行われ、聖路加看護大学理事長、聖路加国際病院理事長の日野原先生の講演を聞く機会がありました。
日野原先生は97歳、その日の午前中にもひとつ講演をこなしてきたという、大変エネルギッシュな活動を続けています。国内だけではなく、9月にはブラジルまで行かれ、日本人移民100周年の記念行事に参加されています。ブラジル サンパウロにはニュヨーク経由で22時間の飛行時間ですから、97歳としては飛びぬけた体力、気力がないとなかなか行くことが出来ません。
ブラジルへの移民は、日本政府の当時の不況対策の一環として行われました。未来には夢があるという政府の言葉とは裏腹に、家も畑も無い密林の中での過酷な生活が待っていたという移民の歴史は、本を読んでもわからなかった、実際現地に行かないと分からないものだと講演で熱っぽく語られていました。
ブラジルには日野原先生と一緒に“新老人の会”のメンバー68人が行かれました。“新老人の会”は日野原先生が理事長をしている財団法人“ライフプランニングセンター”の中にある会で、75歳以上をシニアー会員とし、60歳以上75歳未満をジュニア会員、60歳未満をサポート会員としています。
“新老人の会”は5つ目標を掲げています。

1)自立———–自立とよき生活習慣やわが国のよき文化の継承
2)世界平和——-戦争体験をいかし、世界平和の実現
3)自分を研究に—自分の健康情報を研究に活用
4)会員の交流—–会員がお互いの間に新しい友を求め、会員の全国的な交流をはかる
5)自然に感謝—–自然への感謝とよき生きかたの普及

“新健康”として日常習慣を変えていくように日常生活での具体例を挙げていました。福祉関係の会員の方で中国に施設を作るために、80歳のときに中国語会話が出来るように勉強し、韓国に施設を作るために90歳のときに韓国語を勉強し、ブラジルに施設を作るために100歳のときにポルトガル語を勉強した人がいるそうです。能力はみんな持っている、それを活かすか、活かさないかで90歳、100歳でも能力を生かす生き方をしなくてはいけない。また歩き方も指導する先生がいて、歩幅の狭い歩き方から幅を広くして重心を移動させる歩き方をし、手も大きく前には振らずに後ろにも手が行くようにする。声もだんだん低くなりドの音で会話するようになるので、ラの音で会話するようにする。寝る姿勢はうつ伏せが呼吸を楽にする。食事は若いときの60%ほどの食事の量にする。日野原先生は1日3回の食事のうち、固形物は夕食だけだそうです。

高齢者という言葉は差別言葉で、中国の老師はあることに秀でた人に対する尊敬語であること、英語でもoldではなくthe elderlyを使って尊敬語であることを強調していました。 最後に健康とは幸福と同じ意味で、病気に罹っていても、体が不自由でも今、幸福を感じられるかどうかが健康かどうかの基準になると締めくくりました。QOL(生活の質)を見る場合、痛みがあるかどうか、睡眠はよく取れているかどうか、食欲があるかどうか、などはよくチェックされますが、その中に、あなたは幸せですか?という項目もあります。
日本の医療の中で幸福感が一番ないがしろにされているところだと思います。