先日の陸上世界選手権ベルリン大会で、女子800メートルで南アフリカのキャスター・セメンヤ(18歳)が金メダルを取りました。
彼女の体つき、声が男性的であるとの指摘を受けていましたが、検査の結果、セメンヤには卵巣が無く、男性ホルモンのテストステロンを大量に分泌する精巣が体内にあることが判明しました。国際陸連のスポークスマンは“これは薬物使用といった意図的な不正の問題ではなく、医学上の問題である”と発表しました。

「できそこないの男たち」福岡伸一著 (公文社新書) では、オスとメスを生み出す仕組みを300年ほど前からの精子発見の歴史をたどりながら追っています。
その手がかりを両性具有からヒントを得、20年ほど前、男を作る遺伝子(ZFY遺伝子)の発見に名乗りを上げたデイビット・ペイジから始まります。すぐにこの遺伝子は誤りであることがわかり、他のグループによってSRY遺伝子が見つけられました。その遺伝子は精子のY染色体にあります。
“もしあなたが女性なら、あなたの卵子のもとになる細胞が二分裂して二つの卵子が形成されるとき、46巻の百科事典は、均等な23巻ずつの2セットに分けられてそれぞれの卵子の中に分配される(22+X)。もしあなたが男性なら、精子の形成において少しだけ異なったことが生じる。精子のもとになる細胞が二分裂して二つの精子が形成されるとき、46巻の百科事典は、23巻ずつの2セットに分けられる(22+X,22+Y)。しかしこの2セットは完全な均等ではない。46巻のうち最後の1巻だけはなぜか際立って小さいものなのだ”。

その際立って小さなものがY染色体。そして精子の22+Xと卵子の22+Xとが結びつくと44+XXの受精卵となり女性になり、精子の22+Yと卵子の22+Xとが結びつくと44+XYの受精卵となり男性になります。
そのときごく稀に編集上のミステイクが起こりえます。
“精子が形成されるとき、XとYが振り分けられる。このときY染色体の一部がちぎれて、X染色体が属する側の精子のどこかに紛れ込んでしまう。この精子は卵子(22+X)と受精して、受精卵が誕生する。ここから導かれる個体の遺伝子型は、44+XX、つまり女性である。にもかかわらず、紛れ込んだY染色体の一部から、男性化の命令が発せられたとしたら。命令は多段階のカスケードを流れ始め、外見的には睾丸とペニスを有する男の姿をとることになる。これが女性型男性、両性具有の一形式である。
これとは全く逆のパターンが考えられる。Y染色体の一部に落丁が発生する。その部分には男を男たらしめる最初の重要な情報が書き込まれていた。そこが抜け落ちてしまうのだ。そのようなY染色体を振り分けられた精子の遺伝子型はなお22+Yであり、卵子と結合すれば、遺伝子型としては44+XYを、つまり男性の染色体を与えることになる。しかし、Y染色体の上に男性化の指令が欠落している。これが男性型女性で、これも両性具有の一形式である。”

100歳以上の方が4万人を超えました。6分の5が女性です。そんな中で若い人の精子の奇形、精子数の減少等が騒がれています。男子の出産が減っている、あるいは女性化が問題視されています。Y遺伝子になにかが起きているようです。

町田 久