昨年秋に、厚生労働省の要請を受け、独立行政法人、労働政策研究・研修機構のPress Releaseに「勤務医の就労実態と意識に関する調査」の調査結果が公表されました。
長時間労働をはじめとして大変厳しい勤務環境に置かれている医療従事者の中でも、勤務実態等が把握できる調査が比較的少ない勤務医を対象とするアンケートによるものです。大変厳しい現状が見えてきます。その内容を大まかに見てみると、

  1. 医師不足を「7割弱」が認識、とくに痲酔科、救急科、小児科等で不足、過疎地域では「8割弱」が不足を認識している。
  2. 週当たり全労働時間は、4割が「60時間」以上。約半数が年休取得日数「3日」以下。
  3. 宿直がある者の平均睡眠時間は「4時間未満」が半数弱で、患者数が増えるほど、「ほとんど睡眠出来ない」とする割合が高くなっている。翌日は通常勤務が「86.2%」。
  4. 「9割弱」がオンコール出勤がある働き方をしている。そのうち約半数が月に「1~3回」出勤。

診療科別にみると、4回以上の割合は脳神経外科で「36.7%」、産科・婦人科で「31.3%」、呼吸器科・消化器科・循環器科で「30.9%」、外科「29%」などとなっている。
5.「45.5%」が睡眠不足、「60.3%」が疲労感、「49.2%」が健康不安、そして「76.9%」が何らかのヒヤリ・ハット体験がある。
知り合いの数人の医師から、疲労感を訴えてこられて来ます。病院の中に治療室を作りましょうと声が掛かったりしますが、「我々が疲れているので、我々のために作って欲しい」と医師から言われます。「忙しすぎてこれからの先の希望が見えない」ともおっしゃっていました。「先生が先の希望がないなどと言っていては、希望を求めている患者さんに頼りない印象を与えてしまいますよ」と申し上げておりますが、医師をはじめ医療従事者の皆さんは、強い使命感を拠り所として診療にあたっています。本当に頭が下がります。

では、これらの問題に対してどうしたらいいのか?
まず病院内に医療従事者のためのセラピールームを作り、病院側が積極的に彼らの疲労感を取ることに着手し、ヒヤリ・ハット体験などの数字を落として、医療の質を高めることでしょう。今後の病院のシステムとして確立することが必要なことだと感じています。
一方今世紀に入り、次々と登場して来ている先端医療にも大きな問題点が出てきています。慢性骨髄性白血病に対する分子標的型のグリベックという新薬があります。1983年以前の8年生存率が15%以下だったのが、グリベックが登場した2001年以降は87%に改善されています。ただし、この薬代は1ヵ月で33万円、健康保険の3割負担で10万円、高額療養費制度で年齢、所得によって負担が5万円弱になる人もいます。それでも負担はかなり大きい。大腸がんの抗体療法のベクティビックスだと1回の点滴で、約50万円、3割負担で15万円、高額療養費制度で、8万円程度と高額治療になります。
誰もがこの高額の先端医療を受けられるかは、かなり疑問です。医療サービスを提供する側も、そして医療サービスを受ける患者側にも厳しい医療の世界が見えてきています。

町田 久